漏電火災警報器とは?消防法の設置基準と点検義務|福岡の電気工事士が解説

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「漏電火災警報器」という設備をご存じでしょうか。名前が似ているため分電盤の漏電ブレーカーと混同されがちですが、まったく別の設備で、消防法にもとづく「消防用設備等」のひとつです。対象になる建物には設置の義務があり、設置したあとは定期点検と消防署への報告まで求められます。この記事では、福岡・佐賀で電気工事に対応する電気工事士の有資格者の視点から、漏電ブレーカーとの違い・どんな建物が対象になるのか・点検と報告のルールを、条文と消防局の資料をもとに整理します。

漏電火災警報器とは?漏電ブレーカーとは目的が違う

漏電火災警報器は、消防法施行令第7条第3項が定める「警報設備」のひとつです。同項は警報設備を「火災の発生を報知する機械器具又は設備」と定めており、自動火災報知設備やガス漏れ火災警報設備と並んで漏電火災警報器が挙げられています。つまり消火器や誘導灯と同じ「消防用設備等」の仲間で、電気設備というより防火のための設備として位置づけられているのがポイントです。

規格を定めた「漏電火災警報器に係る技術上の規格を定める省令」第2条第1号は、漏電火災警報器を「電圧六百ボルト以下の警戒電路の漏洩電流を検出し、防火対象物の関係者に報知する設備であって、変流器及び受信機で構成されたもの」と定義しています。電線を通す変流器と、その信号を受けて警報を鳴らす受信機の組み合わせ、という構成です。

仕組みは「行き」と「帰り」の電流の差を見ること

北九州市消防局が公開している「消防同意・消防用設備等審査基準(各論)」の「第14 漏電火災警報器」は、その原理を「屋内に入っていく電流と出ていく電流の差を変流器により調べ、その差が一定値を超えた場合に受信機において警報を発するというもの」と説明しています。電気が本来の通り道から漏れると行きと帰りの電流に差が生まれる——という考え方は、分電盤の漏電ブレーカーとまったく同じです。この原理そのものについては漏電遮断器(漏電ブレーカー)の役割と動作原理もあわせてご覧ください。

「知らせる」ための設備で、電気は止まらない

決定的に違うのは、漏電火災警報器が警報を出す設備であって、電気を遮断する設備ではないという点です。作動する電流の値も大きく、上記の規格省令第7条は「公称作動電流値」を「二百ミリアンペア以下でなければならない」と定めています。住宅の漏電ブレーカーが内線規程で定格感度電流30mA以下・動作時間0.1秒以内の高感度高速形とされている(漏電ブレーカーの定格感度電流について詳しくはこちら)のと比べると、けた違いに大きい値です。感電を防ぐための装置ではなく、漏電による発熱・火災を防ぐための装置だと考えると分かりやすいと思います。

なお消防法施行規則第24条の3第5号は、可燃性蒸気や可燃性粉じん等が滞留するおそれのある場所に設ける場合に限って「その作動と連動して電流の遮断を行う装置」を安全な場所に設けることとしています。裏を返せば、一般的な設置では警報が鳴るだけで電気は流れ続けるということです。警報が鳴った時点で危険がなくなったわけではありません。

消防法で設置が必要になるのは「ラスモルタル造」の建物

設置義務は消防法施行令第22条に定められています。条件は建物の構造用途・規模の2つが重なったときに生じます。片方だけでは対象になりません。

大前提は「鉄網入り」の壁・床・天井があること

同条第1項の柱書は、対象を「間柱若しくは下地を準不燃材料(建築基準法施行令第一条第五号に規定する準不燃材料をいう。以下この項において同じ。)以外の材料で造つた鉄網入りの壁」「根太若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入りの床」「天井野縁若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入りの天井」を有するものに限定しています。木造の下地に鉄網(ラス)を張ってモルタルを塗り上げた、いわゆるラスモルタル造の建物です。

なぜラスモルタル造だけが対象なのか。前掲の北九州市の資料はその理由を明確に書いています。「ラスモルタル造の建築物に漏洩電流が流れると、鉄網が熱せられ火災が発生する恐れがあるため、この漏洩電流を検出して防火対象物の関係者に報知することを目的とした警報設備である」——つまり壁の中の金網そのものが発熱体になってしまうという、この構造に固有のリスクに備える設備なのです。だからこそ同条第2項も、漏電火災警報器は「建築物の屋内電気配線に係る火災を有効に感知することができるように設置するものとする」と定めています。

逆にいえば、鉄網入りの壁・床・天井がない建物は、次に挙げる面積や契約電流容量の条件を満たしていても令第22条の対象にはなりません。「50アンペアを超えたら設置義務」とだけ覚えると誤解のもとになります。ただし、令第22条の対象でないことと「漏電が起きない」ことはまったく別の話です。警報器の設置義務がない建物でも、屋内配線やコンセントの絶縁劣化による漏電は同じように起こります。

用途ごとの延べ面積のライン

そのうえで、用途(消防法施行令別表第一の区分)と延べ面積の組み合わせで対象が決まります。主なものは次のとおりです。

▶ 面積を問わず対象
重要文化財等として指定・認定された建造物((十七)項)

▶ 延べ面積150平方メートル以上
旅館・ホテル・宿泊所、寄宿舎・下宿・共同住宅((五)項)/公衆浴場((九)項)

▶ 延べ面積300平方メートル以上
劇場・映画館・公会堂・集会場((一)項)/キャバレー・遊技場・カラオケボックス等((二)項)/料理店・飲食店((三)項)/百貨店・物品販売店舗・展示場((四)項)/病院・診療所・福祉施設・幼稚園等((六)項)/工場・作業場・スタジオ((十二)項)/地下街((十六の二)項)

▶ 延べ面積500平方メートル以上
学校((七)項)/図書館・博物館・美術館((八)項)/駅・港・空港などの旅客施設((十)項)/神社・寺院・教会((十一)項)

▶ 延べ面積1,000平方メートル以上
倉庫((十四)項)/前各項に該当しない事業場=事務所など((十五)項)

▶ 複合用途の建物
飲食店や物販店など特定の用途を含む複合用途防火対象物((十六)項イ)は、延べ面積500平方メートル以上で、かつ当該用途部分の床面積の合計が300平方メートル以上のとき

ご覧のとおり、寄宿舎・下宿・共同住宅は150平方メートル以上と早い段階で対象に入ってきます。木造モルタルの賃貸物件をお持ちのオーナーの方は、ご自身の建物が該当するかどうかを一度確認しておく価値があります。なお、お住まいが賃貸で「自分の部屋で警報が鳴った」という場合、建物全体の設備である漏電火災警報器の設置・点検・報告は通常、建物の所有者や管理会社が行います。入居者の方はご自身で業者を手配する前に、まず管理会社・大家さんへご連絡ください。費用を誰が負担するのかという考え方と連絡の順番は賃貸住宅の電気トラブルは誰が修理する?費用負担と大家・管理会社への連絡手順で整理しています。

契約電流容量が50アンペアを超えるとき

面積の基準に届かなくても対象になる規定があります。令第22条第1項第7号は「前各号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(六)項まで、(十五)項及び(十六)項に掲げる建築物で、当該建築物における契約電流容量(同一建築物で契約種別の異なる電気が供給されているものにあつては、そのうちの最大契約電流容量)が五十アンペアを超えるもの」と定めています。

飲食店・店舗・病院・共同住宅・事務所・複合用途の建物であれば、床面積が小さくても電気を多く使う建物は第7号で拾われるということです。前掲の北九州市の資料によれば、アンペア契約の場合はその契約の電流値を用い、契約容量(kVA)や契約電力(kW)による契約の場合は標準電圧100Vまたは200V・力率1.0として電流値に換算します。電気方式が単相3線式の場合は標準電圧を200Vとし、三相3線式の場合は標準電圧に3の平方根を乗じるとされています。電灯と動力のように契約種別が分かれている建物では、それぞれを換算したうえで最も大きいものを見ることになります。契約書にアンペアで書かれていない場合、この換算をしてみないと50アンペアを超えるかどうかは判断できません。

古い建物でも「建てた当時のままでよい」とはならない

消防用設備等には、基準が新しくなっても既存の建物には従前の基準を適用する——という原則があります(消防法第17条の2の5第1項)。ところが、この原則がそのままでは適用されない設備が消防法施行令第34条に列挙されており、その第5号が「漏電火災警報器」です。

つまり漏電火災警報器は、建てた当時に義務がなかった建物であっても、現行の基準に合わせて設置しなければならない設備ということになります。ラスモルタル造の建物は築年数を重ねているものが多く、屋内配線の絶縁も同じだけ年を取っています。「うちは古い建物だから関係ない」は、この設備については逆で、古い建物ほど正面から関係してくる話です。

設置したあとは定期点検と報告まで義務になる

消防法第17条の3の3は、防火対象物の関係者に対して、消防用設備等について「定期に」点検し「その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない」と定めています。付けて終わりではなく、機能を維持し続けることまでが義務です。

機器点検は6か月に1回以上、総合点検は1年に1回以上

点検の周期は消防法施行規則第31条の6第1項が「一年以内で消防庁長官が定める期間ごと」としており、実際の区分は消防庁の告示で定められています。平成16年消防庁告示第9号(点検の期間等を定める件)の第3「点検の期間」は、漏電火災警報器を名指しで挙げたうえで、機器点検を「六月」、総合点検を「一年」と定めています。福岡市消防局も市民向けの案内で、点検の種類を「機器点検(6ヶ月に1回以上)」と「総合点検(1年に1回以上)」の2つに整理しています。機器点検は主に外観や簡易な操作から判別できる事項の確認、総合点検は設備の全部または一部を実際に作動または使用させて総合的な機能を確認するものです。

報告は1年に1回か3年に1回、点検する人にも決まりがある

点検結果の報告周期は建物の用途で分かれます。消防法施行規則第31条の6第3項は、報告の周期を消防法施行令別表第一の用途区分ごとに列挙しており、いわゆる特定防火対象物にあたる用途が「一年に一回」、それ以外が「三年に一回」とされています。福岡市消防局も「百貨店,飲食店,ホテル,病院等の不特定多数の人が利用する建物(特定防火対象物)」は1年に1回、「工場,事務所,共同住宅,学校等(非特定防火対象物)」は3年に1回と案内しています。

点検を行う人にも決まりがあります。福岡市消防局によれば、延べ面積が1,000平方メートル以上の建物などは消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要です。なお消防法施行令第36条第2項では、工場・事務所・共同住宅といった非特定用途の建物は、延べ面積1,000平方メートル以上のもののうち消防長または消防署長が火災予防上必要があると認めて指定したものが対象とされているため、ご自身の建物が有資格者による点検の対象になるかどうかは、所轄の消防署にご確認ください。それ以外の建物は関係者が自ら行うこともできますが、同市は「点検は,消防庁の告示で定められた基準について実施する必要があるため,専用の工具や点検機器等が必要となります」と注記しています。実務上は専門の業者に依頼するのが現実的でしょう。

消防設備点検資格者は、消防設備士や電気工事士などの資格を持つ人が登録講習機関の講習を修了して交付を受ける資格で(消防法施行規則第31条の6第7項)、電気工事士の資格そのものとは別の制度です。当社は電気設備側の工事・調査を担当する立場ですので、漏電火災警報器の点検・報告そのものについては、消防設備を扱う専門業者や所轄の消防署にご相談ください。

報告を怠ると罰則の対象になる

報告義務には罰則が付いています。消防法第44条は柱書で「三十万円以下の罰金又は拘留に処する」と定め、その第11号が第17条の3の3の規定による報告をせず、または虚偽の報告をした者を挙げています。さらに同法第45条第3号により、法人の従業者等が業務に関して違反したときはその法人に対しても罰金刑が科されます。福岡市消防局も同じ内容を案内しています。

警報が鳴った・漏電が疑われるときは電気設備側の点検を

漏電火災警報器が鳴るということは、屋内配線のどこかから電気が漏れている可能性が高いということです。前述のとおりこの設備は電気を止めてくれませんから、音を止めただけで様子を見るのは危険です。煙や炎が見える、壁や天井が熱い、強い焦げくささが続くといった場合は、迷わず消防(119番)へ通報し、安全な場所へ避難してください。なお、警報を止める操作の方法は機種によって異なります。取扱説明書、または設置した消防設備業者・建物の管理会社にご確認ください。夜間や休日で連絡がつかない場合でも、電気設備側の調査は当社が年中無休24時間で受け付けています。そこまでの状況でなくても、原因が分からないうちは、濡れた手で分電盤や配線に触れない、発熱や焦げたにおいがあれば無理に操作せず離れる、といった基本を守ってください。

そのうえで必要になるのが、電気設備側の調査です。どの回路で漏れているのかは、絶縁抵抗計を使った測定で切り分けます。手順は漏電調査は何をする?絶縁抵抗測定でわかることと依頼から修理までの流れで詳しく解説しています。分電盤内の配線を変更したり補修したりする作業は、電気工事士法上の「電気工事」にあたり、有資格者でなければ行えません。資格の問題に加えて、通電したままの分電盤内は感電のおそれがありますので、ご自身で開けて確かめようとせず、電気工事店にご相談ください。

また、一般的な戸建て住宅の多くは令第22条の設置対象には当たりませんが、漏電そのもののリスクは建物の種類を問いません。ブレーカーがたびたび落ちる、電気代の伸びが説明できない、コンセント周りが熱いといった兆候があれば、漏電修理のページもあわせてご覧ください。

私たちは福岡県全域と佐賀県の主要都市で、電気工事士の有資格者が漏電調査・ブレーカーや分電盤の交換・換気扇の修理に対応しています。年中無休24時間受付、見積り・出張費は無料です。調査や修理そのものの料金の目安は料金ページでご確認いただけます。福岡市・久留米市・北九州市はもちろん、佐賀市・鳥栖市からのご相談もお気軽にどうぞ。ラスモルタル造の店舗や共同住宅で「警報器が鳴った」「電気設備の状態を見てほしい」という段階でも、まずはお電話またはメールでご相談ください。警報器そのものの点検・整備は消防設備を扱う業者へ、鳴った原因である漏電の調査と修理は当社へ、という切り分けになります。

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出典:消防法・消防法施行令・消防法施行規則・漏電火災警報器に係る技術上の規格を定める省令(いずれもe-Gov法令検索の条文本文)/消防庁告示(平成16年消防庁告示第9号「点検の期間等を定める件」)/内線規程(一般社団法人日本電気協会)/北九州市「消防同意・消防用設備等審査基準(各論)第14 漏電火災警報器」福岡市消防局「消防用設備等点検報告制度」。個別の建物が設置対象になるかどうかの判断は、所轄の消防署にご確認ください。

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